私は「こんなものだ」とあきらめ、もとの生活に戻るべきだったと思います。やせたり太ったりしているこの段階で、それ以上バカなことはやめればよかったのです。しかし、私は就職という人生の節目に向かって歩みだしていました。ダイエット地獄に陥っていくには、ちょっとしたきっかけで充分だったのです。ハイスクールを十七歳で卒業した私は、母にすすめられるまま、スチュワーデスの試験を受けました。そのころの私は身長一七〇センチ、体重七八キロ、バスト一○五センチと、どこからどうみてもスチュワーデスのイメージからはほど遠く、最初から合格は絶対無理とあきらめていました。ところが、どこでどうまちがったのか、私は合格してしまったのです。ただ、合格通知を受けとったとき、うれしかったのは束の間、すぐに目の前がまっ暗になりました。「少しやせること」と書かれた、条件つきの採用通知だったからです。それまで、やせる方法といわれるものは、ほとんど試していました。けれど、そのすべてに失敗していたのです。ここでまた同じことを繰り返しても、結果は目にみえています。しかし、せっかく合格したスチュワーデスの職を棒にふるのも、いたたまれません。私はとにかく短期間で確実にやせる、徹底的にカロリーをカットするダイエットを実行するしかないと思いました。朝はブラックコーヒーだけ、昼は野菜サラダだけ、途中でおなかがすけばコーヒーをガブガブ飲み、夜はまたサラダだけを食べる、そんな生活をしばらく続けました。それまでにくらべると急激にカロリーは減るわけですから、体もみるみるやせていきました。このようにやせてくると体重を落とすこと自体がおもしろくなってくるものです。最初はせいぜい一〇キロも減れば充分などと思っていても、実際に体重が減りはじめると、もっとやせたくなるのです。そして、美しくなりたい、見栄えをよくしたいと思ってはじめたダイエットなのに、やがてその目的がすりかわって、病気になってもいいから、とにかくもっとやせたい、という気持ちになってきます。そのうち、自分はどうなってもいいから人間の限界に挑戦してやろうとまで気持ちがエスカレートしてくるのです。